数年前、「AI技術者の初任給が2000万円」という衝撃的なニュースが話題になりました。
当時、多くの人が「AI人材って、本当にそこまで価値があるのか?」と感じたはずです。
しかし、この 初任給2000万円 という数字は、決して「AIを少し使える人」を指しているわけではありません。
この報酬水準が想定しているのは、次のような技術者です。
つまり、AIを「使う人」ではなく、「作る人」です。
いわゆる、
「ChatGPTを業務で使えます」
「生成AIで業務を効率化できます」
というレベルとは、まったく別物です。
「AI人材」と一言で言っても、実際には 関わるレイヤーによって役割も価値も大きく異なります。
まず、その全体像を整理します。
※ 以下は公開情報をもとにした目安です。
| レイヤー | 役割・内容 | 日本の年収目安 | 海外の年収目安 |
|---|---|---|---|
| L0:基盤研究 | 学習原理や数理的枠組みの研究 | 600万〜1,200万円 | 1,500万〜3,000万円超 |
| L1:モデル構造 | Transformerなど再利用される構造設計 | 800万〜1,500万円 | 2,000万〜5,000万円超 |
| L2:基盤モデル設計 | 大規模モデル(GPT/LLaMA等)の設計 | 1,000万〜1,800万円 | 2,000万〜6,000万円超 |
| L3:プラットフォーム | API・推論基盤の提供・運用 | 800万〜1,500万円 | 1,500万〜3,000万円 |
| L4:実務応用モデル | 業務向けAIの設計・改善・運用 | 600万〜1,200万円 | 1,200万〜2,000万円 |
| L5:エンドユーザー | 生成AIを使った業務効率化 | 既存職種に依存 | 既存職種に依存 |
結論から言えば、初任給2000万円が現実的に成立するのは、レイヤー0〜2 です。
特に多いのは、次のような人材です。
AIを「使える人」は、今や世界中にいます。しかし、AIをゼロから作れる人は、世界的に見てもごくわずかです。
こうした人材は、企業の競争力そのものを左右する存在になります。だからこそ、一部の海外企業では「初任給2000万円」という水準が成立するのです。
日本国内に目を向けると、この水準の報酬を支払える企業は、ほとんど存在しません。理由はシンプルです。
「日本には、高度なAIを自前で設計・開発している企業自体が少ない」
その結果、多くの日本企業は、
初任給2000万円という話題は、「AI人材全体」の話ではありません。 それは、ごく一部のレイヤーに属する、極めて希少な人材の話です。
AIについて語るときに重要なのは、 「今、その話はどのレイヤーのAIを指しているのか」 を意識することです。
ここを整理するだけで、AI人材・年収・将来性に関する議論は、ずっとクリアで見通しの良いものになるはずです。